宮﨑敏郎を考える ~変態的な打撃をデータで可視化しよう~

考えるシリーズ

こんにちは!三浦ベイ輔です。

本日は首位打者を獲得した宮﨑敏郎選手について書いてみたいと思います。
足の状態も思わしくない中、開幕から安定した活躍を見せ、自身二度目の首位打者を獲得した宮﨑選手。

そんな宮﨑選手の今年の成績はこちらです。

宮﨑敏郎(2023)
打率 .326
HR 20
打点 71
出塁率 .395
OPS .934
盗塁 1

これで34歳です。中々とんでもないことをやってくれたと思います。
打率は2位に圧倒的な差をつけて首位打者を獲得。
そしてOPSはキャリアハイを記録。

キャリア初盗塁を記録するなど、なんとも素晴らしいシーズンを送ってくれました。

そんな宮﨑選手の打撃についてはよく”変態”と称されますが、具体的にどのような点が”変態”なのでしょうか?
データを使って宮崎選手の変態性を可視化し、宮﨑選手の変化や進化を考えてみましょう。

理想的な打撃

毎年安定した成績を残してくれる宮﨑選手。
それを支えているのは間違いなく打席での”アプローチ”にあると思っています。

そして今年は結果だけではなく、そのアプローチを含めた内容も素晴らしいシーズンでした。

宮﨑敏郎(2023)
K%(三振率):9.3%
BB%(四球率):8.9%
ISO(長打力):.213

三振率は9.3%。今年の規定到達選手で10%を切っているは、中日の大島選手、SBの中村晃選手、そして宮﨑選手の3人のみ。
そしてその三振率10%切りを8年連続で達成しているのが宮﨑選手。まずこの点が宮﨑選手が毎年安定した成績を残す大きな要因の一つでしょう。

加えて宮﨑選手の凄まじい点はこのコンタクト能力を長打力を両立している点だと思います。

今年のISO(長打率-打率)は.213で12球団で8番目。本人の中でも2018年に次ぐ数値でした。

なお三振率で10%を切りつつ、ISO.200を超えた選手はこの10年で吉田正尚選手と宮﨑選手の2人のみ。コンタクト率と長打力を両立することがいかに難しいかを表していると思います。

そして四球率も8.9%をリーグ平均および本人のキャリア平均(7.1%)を超える数値。

「三振は少なく、四球は多く、長打も多い」
というまさに理想的な打撃と言えるでしょう。

スイング率の変化とある特殊能力

そんな宮﨑選手の打撃スタイルをもう少し深堀りしてみましょう。
変わらぬ活躍を見せてくれている宮崎選手ですが、実は打席でのアプローチは前回首位打者獲得時から大きく変わっている選手です。
試しに同じく首位打者を獲得した2017年とある指標を比較してみましょう。

Swing%(スイング率)
2017年 48.0%(15位/55位)
2023年 41.1%(43位/49位)
※順位は規定到達選手内

2017年の首位打者獲得時はどちらかと言えば積極的にスイングをしていた宮﨑選手。元々選球眼は高くボール球のスイング率は低いタイプでしたがゾーン内に来た球はどんどん打っていくタイプ。
一方で今年はスイング率は控えめ。
リーグ内だと宮﨑選手よりもスイング率が低かったのは、近本選手、中野選手、大山選手の阪神勢のみ。リーグトップクラスにスイングをしなかった選手ということになります。

Z-Swing%(ストライクゾーンスイング率)
2017年 73.2%(10位/55位)
2023年 57.0%(42位/49位)
※順位は規定到達選手内

特にストライクゾーンスイング率で見ると顕著で前回首位打者獲得時と比べると15%以上もスイングをしなくなっています。
実はスイング率自体は昨年から明確に低くなっているのでおそらく昨年から何か大きな意識の変化(より狙い球を絞る)があったのだと思います。
よりスイングするべき球を絞って打つようになったと考えて良さそうですね。

2023年P/PA(1打席あたりの被投球数)
3.78球(33位/49位)

ここで1打席あたりの被投球数を見てみましょう。
スイング率がリーグ屈指に低い宮﨑選手ですので、当然「打席で投げさせた球数も多いのでは?」と思われる方多いのではと思います。

ただデータを見てみると投げさせた球数はむしろ平均以下。
どちらかと言えば「早打ち」の選手であることがお分かりいただけるのではと思います。

“スイング率は低い”
“早打ち”

この一見相反する事象が両立しているのは何故なのでしょうか?

ここからは個人的な推察になりますが、宮﨑選手は狙っている球を
“一撃で仕留める能力”
が異様に高いのではないかと思っています。

狙い球を絞った上で、不用意なスイングはせず、かつ狙い球を打ち損じてファールにするケースも少ない。

野球経験者の方は
“狙い球以外につい手が出てしまう”
“狙っていた球を打ち損じてファールになる”
みたいことは多くの方が経験していると思いますが、宮﨑選手はそういった打席、スイングが非常に少ないということが推察できるように思います。

カウント別成績

初球
打率 .594(32-19)
本塁打 4

2球目
打率 .400(90-37)
本塁打 4

更に裏付けるのが早いカウントでの打率。初球打率は脅威の.594。そして2球目の打率も.400。
初球打ち、2球目打ちの割合はチームで最も少ないですが、しっかりと打つべき球を仕留めていることがよくわかります。

コンタクト能力、長打力を持ち合わせているのはもちろんですが、以上の事を考えると、“打つべき球の見極め”が宮崎選手が持っている特殊能力のように感じますね。

宮﨑敏郎 OPS
2017年 .856
2023年 .934

以上のようなアプローチの変化、一撃で仕留める力の進化により同じく首位打者を獲得した2017年よりも四球率、長打率は上がりました。結果としてOPSは大幅に上昇。
34歳にしてキャリアハイシーズンを送る大きな要因となったと言えるでしょう。

よく宮﨑選手は”衰えていない”みたいな表現をされることがありますが、個人的にはその表現には反対。
宮﨑選手は”進化”しているのです。

弱点の少なさ

アプローチ面の変化や進化によってキャリアハイシーズンを送った宮崎選手。

それを可能にしたのは宮﨑選手の”弱点の少なさ”だと思っています。

ゾーン別打率(9分割)
最も得意なゾーン:外角高め .500
最も苦手なゾーン:内角高め .261

ゾーン別の打率で見ると、一番苦手だったコースでも打率.261。
打率.250以下のゾーンを有していないことになります。
これは12球団でも宮﨑選手のみ。
さらにどのゾーンでもホームランを打っており、これは12球団でも宮﨑選手と楽天の浅村選手の2名のみ。
外側のボールは逆方向に強い打球を打てますし、内側のボールは体を回転させてしっかりと引っ張ることもできる。
どのゾーンでも対応できる弱点の少なさが、宮崎選手の素晴らしいアプローチを可能にしていると言えるでしょう。

球種別打率
ストレート .336
変化球   .322

そして球種別で見ても同様に弱点はなし。ストレート系のボールにも変化球にも高いレベルで対応ができています。

どのゾーンでもどの球種でも対応できる能力。
それこそが前述のようなアプローチを可能にする宮崎選手の”変態性”を表すデータだと思います。

最後に

いかがだったでしょうか。

首位打者を複数回獲得した選手は決して多くなく、21世紀以降だと10名のみ。
複数回獲得することは簡単ではありません。

6年越しに2度目の首位打者を獲得した宮﨑選手。
その裏には前回首位打者獲得時からの”変化”と”進化”があったことがお分かり頂けたのではないかと思います。

まだ6年契約の2年目。34歳という年齢ではあるものの、内容を詳しく見るとまだまだ末永く活躍してくれそうな気はします。

天才的なバッティングセンスを持つ宮﨑選手ですが、その裏にある変化についても追いかけていきたいですね。

※データは1.02より引用
※2023シーズン終了時点

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