ありがとう藤田一也 ~藤田という選手とこの2年間の軌跡をデータで振り返る~

ありがとうシリーズ

こんにちは!三浦ベイ輔です。

本日は2023年シーズンを持って引退を表明した藤田選手について書いてみたいと思います。

2004年にドラフト4巡目で近畿大学からベイスターズ入団した藤田選手。
2年目から1軍に定着し、主に内野のサブとして守備中心に存在感を見せてくれていました。
その後は内村賢介選手とのトレードで楽天に移籍。2013年には楽天の日本一にも貢献しました。
2021年の楽天を戦力外となるも、ベイスターズへ復帰。これは本当に嬉しかったですね。

復帰後は主に代打として活躍。貴重な左の代打としてしっかりと戦力化してくれました。

そして2023年9月21日に現役引退を表明。19年間のプロ野球生活に幕を下ろすことを決断しました。

引退する場所としてベイスターズを選んでくれた藤田選手。
そんな藤田選手とはどういう選手だったのか。
そして古巣復帰後の2年間はどのような2年間だったのか。
データや指標から考えてみたいと思います。

藤田一也という選手

守備

まずは藤田選手と聞いて多くの方が真っ先に思い浮かべるのは”守備”でしょう。

個人的に藤田選手の守備の魅力は「ミスの少なさ」だと思っています。

キャリア通算守備率(セカンド) .992

巧みなグラブ捌きでキャリア通算の守備率は脅威の.992。19年間のプロ生活でセカンドとしては合計で33失策しかしていません。
ちなみに今シーズン最も守備率が高いセカンドは広島の菊池選手で.994。
キャリアを通してほぼ同水準であることと考えると藤田選手の守備の“確実性”を実感すると思います。

ErrR(失策抑止による貢献指標)も記録のある2014年以降は常にプラス。堅実な守備で常にチームに貢献してきました。

私自身もとにかく藤田選手の癖のない無駄のない守備がとにかく大好きでしたね。

一方で守備範囲については決して身体能力が高いわけではありませんでしたが、本人もこだわっていたポジショニングでカバー。RngR(打球処理による貢献)も2015年まではプラスを叩き出していました。

ゴールデングラブ賞は3度獲得。間違いなく守備の名手としてキャリアを歩んできた選手と言っていいでしょう。

●打撃

そしてもう一つの藤田選手の大きな特徴は”コンタクト能力”だと思っています。

キャリア通算 三振率
8.8%

空振率も毎年10%前後を記録するなど、とにかく”空振りと三振をしない選手”。

この数字の異常性がどうすれば伝わるのか考えましたが、下記のコンタクトヒッター達のキャリア通算三振率を見て頂くのが一番わかりやすいと思います。

キャリア通算三振率
近本光司(阪神):12.4%
松本剛(日ハム):11.6%
大島洋平(中日):11.3%
青木宣親(ヤク):10.9%
中村晃(SB):10.1%
内川聖一(SB):9.9%
宮崎敏郎(DB):8.5%

一番下に藤田選手以上の異常値を叩き出している人がいますが、こうやって見ると藤田選手の凄さが伝わりやすいかと思います。

空振率も例年10%前後と低く、“バットに当てる能力”に長けている選手でした。

一方でこのコンタクト能力と積極的に打ちに行く打撃スタイルから四球は少ない選手です。
四球率はキャリア通算4.0%。ここまで少ない選手は珍しいですね。

こうやって見ると実は代打向きの選手とも言えるかと思います。積極的に振っていき、確実に前に飛ばしてくれる選手。選手寿命が長かったのも、この打撃スタイルにより代打としての起用がしやすかったというのも大きいように感じますね。

2005年9月1日
藤田一也プロ初スタメン試合

第一打席
見逃し三振(三球三振)
第二打席
初球レフト前ヒット(プロ初ヒット)
第三打席
空振り三振

ここからは私の妄想ですが、この藤田選手の打撃スタイルに深く影響を与えたのはこのプロ初スタメンの試合だったのではと思っています。

第一打席は全く手が出せずに見逃し三振。そして第二打席は初球を弾き返してレフト前ヒット。

この経験から早いカウントから積極的に打ちに行く藤田選手の打撃スタイルが固まっていったとも捉えることができそうですね。

これだけ三振が少ない藤田選手がプロ初スタメンの試合で2三振しているというのも、その後の藤田選手の努力が垣間見えるところだと感じています。

古巣復帰1年目

そんな藤田選手ですが2021年に楽天を戦力外に。
進退が注目されましたが、ベイスターズ復帰を決断しました。

2022年は軽い肉離れで開幕メンバーからは漏れたものの、4/12に昇格。
主に代打中心で起用され、4/19には代打で同点タイムリー、4/21には代打で決勝タイムリーを放ちお立ち台に上がるなど代打の切り札として活躍をしてくれました。

2022年 代打成績
打率 .276

代打打率は.276。これは20打席以上代打の機会があった選手の中でチームトップ。
まさに左の代打の切り札として立派な戦力になってくれました。

2022年 対ストレート
打率 .118

一方で速い球に対する対応に苦しんでいる印象を抱いた復帰1年目。
中々早い球に対してしっかりと弾き返せていない打席が目立ちました。
ここは年齢による影響を感じたファンも多かったのではないでしょうか。

そんな中迎えたクライマックスシリーズ第三戦。
一点差に追い上げた9回裏に一死満塁で代打として登場したの藤田選手でした。
藤田選手らしく初球のストレートを振り抜いたものの、打球はセカンド正面へ。
藤田選手は懸命に一塁へヘッドスライディングを試みたが届かず。無念の併殺で試合終了となりました。
顔をグランドに埋めたまましばらく立ち上がれなかった藤田選手の姿は忘れることはないでしょう。

40歳という年齢もあり翌年の進退が注目されましたが、藤田選手の決断は”現役続行”

悔しさを胸に藤田選手の復帰2年目の挑戦が始まりました。

2年目の挑戦

そして迎えた2023年シーズン。
開幕は2軍スタート。7月まで2軍暮らしが続きました。
当然ファームは”育成の場”です。若手の起用が優先されるため、藤田選手の出番はかなり限定的でした。実際に藤田選手に与えられた打席は約3カ月半で47打席のみ。

そんな中で藤田選手が今年2軍で残した成績はこちらです。

2023年ファーム成績
打率 .304
OPS .791
ストライクゾーン空振率 3.2%
wRC+ 182

いやー凄い。高い打率、OPSを残すとともにゾーン空振率はファーム全選手で2番目の少なさ。
wRC+は182とファーム平均の1.8倍の打力を見せつけたことになります。

ファームにいるベテランに求められることは、少ない打席で結果を出して1軍へ行くこと
限られた機会で実力を十分に発揮し、1軍へ上がっていった姿は”ベテランの意地”にも見えましたし、若手の成長機会を奪いたくないという藤田選手なりの”配慮”にも感じました。

一軍昇格後はやはり代打中心の起用。
成績はこちらです。

2023年 1軍成績
打率 .333
OPS .757

しっかりと結果を残す素晴らしさ。今や左の代打一番手です。
2軍からしっかり這い上がってチームに欠かせない存在になったのは執念を感じました。

2023年 対ストレート 
打率 .444

そして何より驚いたのは、昨年苦しんでいたように見えたストレートへの対応。
広島の栗林選手の速球を思いっきり引っ張って長打にした打席は鳥肌が立ったのを覚えています。

ここにきてちゃんと前年の課題を潰してくるところも素晴らしいですね。

立派な戦力として活躍してくれた藤田選手ですが、9月21日に現役引退を表明。
まだまだ代打として活躍してくれそうでしたが、やはり本人としては「セカンド、ショートを守れなくなったこと」が大きかったようでした。
その守備に対するプライド、拘りも藤田選手らしさを感じますね。

ありがとう藤田選手

19年間のプロ野球生活に幕を下ろすことを決断した藤田選手。
実は私が横浜スタジアムでアルバイトしていた時期に活躍していた選手であり、個人的にも思い入れの強い選手です。とにかく藤田選手の守備練習、グラブ捌きを見るのが大好きでした。

楽天へのトレードは寂しかったですが、楽天での活躍は心から応援していました。

そして何よりも嬉しかったのはベイスターズに戻るという決断をしてくれたこと。
ベイスターズで日本一になりたいと思ってくれたこと。
ベイスターズで引退をすることを決めてくれたこと。
一人のベイスターズファンとして感謝しかありません。

華麗なグラブ捌き。
類まれなコンタクト能力。
一人の野球人として憧れしかありません。

随所に垣間見える後輩との関わり方や若手への指導。
野球に取り組む姿勢。
毎年課題を潰してくる向上心。
一人の人間として尊敬しかありません。

藤田一也選手という存在を応援できたことを幸せに感じながら、何とか藤田選手と日本一になりたいという想いを持って残りのシーズンも応援したいと思います。

ありがとう藤田一也。
そして今後もベイスターズをよろしくお願いします。

※データは1.02より引用

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