ベイスターズのバント戦術を考える ~無死一塁のバントの成果を見てみよう~

考えるシリーズ

こんにちは!三浦ベイ輔です。

本日はベイスターズのバント戦術を考えていきたいと思います。

野球ファンの間で度々議論になるバントの是非。
ベイスターズファンの間でも、日常的に「この場面はバントをすべき!」「なんでバントなんだ!」のような議論が度々されている所を目にします。

バントの有効性について検証されている方は多々目にしますが、「贔屓チームにおいてバントの結果がどうだったか」を検証されている方は多くはないので、「2023年のベイスターズ」に絞ってバントという作戦がどのように作用したか検証してみたいと思います。

なお、今回は”無死一塁”という状況に絞って検証していきます。
ただあくまでも“たった1チームのたった4カ月の結果”に過ぎませんのでバントの有効性の検証をするつもりはありませんし、バントの是非について結論を出すつもりもございません。
あくまでも参考程度に見て頂けると幸いです。

前提 ~バントの有効性~

もはや野球ファンの常識にもなってきていますが、そもそもバントという戦術は基本的に、
「非効率な作戦」
であるということはすでに多くの方が明らかにしています。

実は手堅くない送りバント 「損益分岐点」は打率1割 - 日本経済新聞
初回、先頭打者が出塁して2番打者。ここで送りバントのサインが出れば、解説者は決まってこう言うだろう。「手堅いですね」。しかし統計からみると、これは正確とはいいがたい。まずは2014~18年の日本のプロ野球(NPB)における「得点期待値」をみてみよう。特定の状況からそのイニングが終わるまでに入った得点の平均を示す。無死一...

上記記事を見て頂けるとわかるように今回検証する無死一塁というケースで見てみると、バントをすることで得点期待値が0.13減少し、得点確率は0.8%減少するという結果になります。

また、打者がバントすべきかどうかの損益分岐点は.103と言われており、ほとんどの打者は”バントをすべきではない”という結論となります。

実際に私も好き嫌いで言えば、バント戦術は「好きではない」というポジションです。

それでも多くの指揮官がバントという戦術を選択する理由は、人間が「得をすること」よりも「損をすること」の方に目を向けてしまうという心理によるものと考えられています。
実際私も監督をかじったことがありますが、頭では非効率だとわかっていても、バントをしたくなる気持ちを痛いほど理解しました。実際バントのサインは出しましたしね。

以上のことから基本的にバントという戦術は非効率であると結論づけられており、本記事ではそれを覆すつもりは毛頭ございません。

あくまでもベイスターズにおけるバント采配がどのような場面で使われており、得点にどのように繋がったのかを検証するためのものになりますので、ご理解ください。

また結果は1球速報にて集計しています。多少の数字の誤差があるかもしれませんが、ご承知おきください。
↓集計例(一部)

ベイスターズのバント傾向

ということで、まずはベイスターズおけるバントの傾向についてです。

とその前に今回検証する無死一塁というケースにおいてベイスターズは他球団と比べて得点が取れているのかについて見てみましょう。

無死一塁からの得点期待値
リーグ平均:0.761点
ベイスターズ:0.755点

リーグ平均をわずかに下回っていますが、ほぼリーグ平均値。ここは「可もなく不可もなく」といったところでしょうか。

続いてベイスターズの犠打数は多いのか?
という点について見てみます。

2023ベイスターズ犠打数
59(12球団中8番目)

実はベイスターズの犠打数は12球団内の立ち位置でみると決して多くはない方。
もちろんバントケースの多さやバントをしない選手が何人いるかということも影響するため、あくまでも参考までですが決して多くはありません。

そのうち今回検証する無死一塁でのバント数は41回。
無死一塁のケースが通算187回。バント割合は約22%ということになります。

続いてイニングにおけるバント割合を見てみましょう。

ここはイメージ通りですかね。やはり終盤の競った展開にてバントを多用していることがわかります。

続いて点差別。

一番バントを使うケースとして多いのは1点リード時。これは納得ですかね。
どちらかというと同点~リード時により多く使用されているのはセオリー通りとも言えますが、個人的には1点ビハインドでバントを使う割合が多いのは少し気になるところです。

次は時期別です。
開幕時からバント割合は減っていき、交流戦でDH制の試合もあった6月は最少の15%。
ただ、7月には倍以上に増えています。
この理由はおそらく皆様のイメージ通りだとは思いますが、“打線の不調”が原因だと個人的には考えています。
7月の平均得点は2.38点。
中々打線が上昇の兆しをみせず、僅差の試合が増えたことで、ベンチもバントの割合を増やし、接戦のゲームをものにしようとしたのでしょう。

以上のことを鑑みるとベイスターズは
・無死一塁からの得点効率はリーグ平均並み
・どちらかというと犠打数は少なめ
・打線が下降すると犠打も増える

という傾向であるということがわかります。

バントはどの程度得点に寄与したのか?

では本題です。
果たして今季ここまでのベイスターズにおけるバントはどの程度得点に寄与したのでしょうか?

ずばり!こちらです!

※バント失敗もバント試行回数に含む
※バント→ヒッティングへの切り替えはヒッティングに含む

なんと!得点確率、得点期待値ともにバントをしたケースの方が高いという結果になりました。
バントの方がヒッティングの得点期待値を上回ったことにも驚きですが、ここまで大きな差がついたことも驚きです。

4月に林のバントから一挙6点の猛攻をしたり、5月に平良が送りバントを失敗した後に、何故か4点取っていたりと上振れ感はあるものの、それにしても…という印象です。

続いて打者別に無死一塁の成績を見てみましょう。

たかだか多くても20打席程度の打席数ですので、選手の能力や特性を表すとは考えていませんが、今年に限ると選手単位で大きな偏りが出ています。

佐野選手や戸柱選手は無死一塁の打率は5割超。牧選手も3割超と苦にしていない印象。

一方で主軸を打つ宮崎、ソトは.200を下回る結果に。

クリーンナップを打つ選手たちが無死一塁で結果を残せていないということが、ヒッティングでの大量得点が生まれにくくしているという側面はあるように感じました。

最後に

いかがだったでしょうか?

冒頭にも申し上げた通り、バントについては統計学上決して効率的な戦術とは言えません。
そしてたかだか41回というバントの結果を基に、「バントは効果的なんだ!」「三浦監督の采配は凄い」と言うつもりもありません。

しかし、「特定のチームの4カ月間」という短い期間でみると良い結果をもたらすこともあるという発見になりました。
基本的には確率の高い方を選択すべきだと考えていますが、短い期間で見てみれば確率の高いことが必ずしも正解であるとは限りません。

無死一塁という状況に関しては得点確率で言えば100回試行して1点変わるか変わらないか。
バントの好き嫌いはあって然るべきですし、僕もどちらかと言えば「嫌い」寄りですが、バントの効果なんて「その程度のこと」だと思って温かく見守っていきたいなと思いました。

シーズン終了後にも集計しようと思っていますので、その時にどうなっているかを楽しみにしましょう。

※無死一塁の得点期待値、シーズン犠打数はDELTA様のデータ引用

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