コーチ陣の功績を考える ~退任するコーチ達が残してくれたもの~

考えるシリーズ

こんにちは。三浦ベイ輔です。

本日は選手ではなく、コーチについて書いてみたいと思います。

先日、2024年コーチングスタッフが発表されました。アナリスト出身者の登用など新たな風が入り、来シーズンへの期待も膨らんでいるところかと思いますが、退任するコーチへの感謝も忘れてはいけません。

そこで本日は退任するコーチ(斎藤コーチ、木塚コーチ、大家コーチ、永池コーチ、藤田和男コーチ)がベイスターズに残してくれたものについて、データ等も使いながら考えていきたいと思います。

斎藤 隆コーチ

2021年オフに1軍チーフ投手コーチに就任。以降2シーズンに渡って投手コーチを務めて頂きました。

就任前の2021年は主力の故障もあり、投手力で苦しんだシーズンでしたが、就任以降投手陣の立て直しに大きく貢献してくれたと思っています。

チーム防御率
2021年 4.15 (12位/12位)
2022年 3.48 (9位/12位)
2023年 3.16 (6位/12位)

12球団で最下位だった防御率を1点近くも良化したことは斎藤コーチの指導も要因の一つでしょう。
斎藤コーチがよく仰っていたのが「ストライクゾーンで勝負できる投手になってほしい」という点です。

第1クール(2月1~4日)で投手の欄に記された「キャンプ1DAYテーマ」は「【ストレートのみ】枠内で勝負する意識を持ち再現性&修正力を身につける」。文字通り、今永昇太(28)、東克樹(26)、山崎康晃(29)ら主力を含む計10投手が次々とブルペン入りする中、全員が直球のみを投げ続けた。

 これは、三浦監督と斎藤コーチが相談して決めたテーマで、斎藤コーチは「ストライクゾーンで打者と勝負できる投手になってほしいので、そういう意識付け」と狙いを説明する。

DeNAは躍進できるのか 沖縄・宜野湾キャンプに見られる“変化”の兆しとは | VICTORY (victorysportsnews.com)

就任直後のキャンプから「投手有利のカウントを作ること」に強いこだわりを見せていました。
その背景と考えられる2021年の指標はこちらです。

2021年Zone%(ストライク率)
44.5%(7位/12位)
2021年F-Strike%(初球ストライク率)
45.7%(12位/12位)

実はストライク率はリーグ平均並みだった2021年シーズン。決して投手陣の制球が壊滅的なわけではありませんでした。しかし一方で初球のストライク率はリーグ最下位。カウント不利の状況を作りすぎていたことが伺えます。ここから導き出したのが「ゾーン内で勝負する意識が欠けている」という仮説だったのでしょう。

四球を出すのは、コントロールが悪いからだけではなく、早いカウントから枠内で勝負する意識が不足していることも要因の一つとし、意識づけの部分から徹底をされました。

その結果としてどのような推移を辿ったのでしょうか。

Zone%(ストライク率)
2021年 44.5%(7位/12位)
2022年  47.0%
2023年 46.8%(3位/12位)

F-Strike%(初球ストライク率)
2021年 45.7%(12位/12位)
2022年 50.3%
2023年 50.6%(6位/12位)

2021年と比較するとかなり良化したのは一目瞭然。
特に初球ストライク率は5%近く上昇しており、意識づけの効果が強く表れたのではないかと思います。

BB%(四球率)
2021年 8.6%(8位/12位)
2022年 7.6%(7位/12位)
2023年 6.7%(2位/12位)

この意識づけの成果として年々四球割合は減少していき、2023年は12球団で2番目に四球を出さないチームへと変貌を見せました。もちろん各投手の成長も大きな要因ではあると思いますが、斎藤コーチの意識づけが大きく実を結んだとも言えるでしょう。

来年から球団スタッフへと転身する斎藤コーチ。また違った形でチームに貢献してくれることでしょうが、是非将来的にはもう一度現場で活躍してほしいですね。

木塚敦志コーチ

続いては木塚コーチ。木塚コーチは2011年から2012年までは一軍投手コーチ、2013年から2014年までは二軍投手コーチ、15年はスカウト、2016年より再び一軍投手コーチを務めるなど、長期に渡ってベイスターズ投手陣を支えて頂きました。

就任する前年の2010年はチーム防御率4.88と投壊していた時期。そこから長きに渡って投手陣を整備し、投手力のあるチームに変えていってくれたように思います。
親会社がDeNAに変わり、チームが少しづつ強くなっていった背景には木塚コーチの貢献もあるのではないでしょうか。

近年は2021年途中にブルペン担当に配置転換をされ、ブルペン中心に勝てるチームに変えていってくれたように感じています。

救援陣防御率
2021年 3.87
2022年 3.31
2023年 3.19

ブルペン陣の防御率もこの3年で大きく良化。特に昨年は勝ちパターンの投手陣が接戦時に踏ん張ってくれたことがシーズン2位の成績に繋がったと思っています。

個人的に木塚コーチの信頼できる所は、現役時代の中継ぎ経験も踏まえながら、選手の気持ちを理解し、選手と適切なコミュニケーションを取ってくれるところだと思っています。

木塚コーチ
「投げる機会がなくて申し訳ない。ストレスがたまっているだろう。何か言いたいことがあったら何でも言ってくれ」

DeNA・斎藤、木塚コーチが示す「配慮」の姿勢 これも首位を支える原動力― スポニチ Sponichi Annex 野球

中々登板機会のなかった坂本に対して「投げる機会がなくて申し訳ない。何か言いたいことがあったら何でも言ってくれ」とコミュニケーションを取っていた木塚コーチ。

ブルペン陣のメンタル、難しさについて深く理解し、配慮ができる人間性こそ長らく投手コーチとして球団に重宝されてきた所以なんだろうと感じました。

来季からは球団スタッフということですが、長い現場経験を活かしつつ、新たな貢献をしてくれることを期待しています。

大家友和コーチ

続いては大家コーチ。2軍投手コーチとして2018年シーズンより指導をしてくれていました。

よく大家コーチの記事で拝見したのが、「ツーシーム」の伝授です。

2軍 今季ツーシームを投じた投手
1.DeNA 20人
1.ヤクルト 20人
3.ソフトバンク 15人
3.日ハム 15人
3.阪神 15人

他チームよりもツーシームを投げる投手が多いのは明らかですね。
中々学生時代から投げる選手が多い球種ではありませんので、まさに大家コーチの影響を強く感じる部分になります。
特に櫻井投手や徳山投手に関しては、大家コーチからツーシームを教わったとの記事も出ておりましたし、強く影響を受けているように感じています。

またツーシームの他にもカットボールの精度を上げることにも定評のあったコーチでした。

2軍カットボール投球割合
1.DeNA 12.0%
2.中日 9.8%
3.ソフトバンク 9.7%

圧倒的にカットボールの投球割合が多いDeNAファーム投手陣。2年連続で断トツ1位の投球割合でした。
またPitch Value(失点増減の合計)についても全球種の中でカットボールがトップ。
間違いなくDeNA投手陣の武器になったと言えるでしょう。

また変化球を教えるという「ティーチング」だけでなく「コーチング」についても意識して実行されてきたコーチだと思っています。

櫻井「大家コーチが口を酸っぱくして言っていたのは『何で?』を大事にしろということです。たとえば、初回にある球種を打たれたけど、何でそのボールを選択したのか。今回はカーブが少なく、スライダーが多かったのは何故か。バッターの傾向なのか、それとも自分の状態を見てのことだったのか。他には脚があるチームが相手だった場合など、理由やシチュエーションを自分で考えられるようにするためにレポートを書きます。」

DeNA櫻井周斗をラミレス監督が高評価。驚くほど投球内容が変わった (3ページ目) | プロ野球 | 野球 | web Sportiva (shueisha.co.jp)

毎試合選手にレポートを書かせ、しっかりと自省をさせるということも徹底されていたのではないかと伺えます。ファーム選手もプロ野球選手である前に一人の若い人間。「自分で考える」という能力を養うためにも非常に価値のある取り組みだったのではないでしょうか。

多くの事を若手投手陣にもたらしてくれた大家コーチ。特に球種面で多くを伝授をしたと思われる櫻井投手や京山選手の活躍が大家コーチに対する恩返しになるでしょう。

大家コーチの元で育った若手投手陣たちが来季以降大きく飛躍することを祈っています。

永池恭男コーチ

続いては永池恭男コーチ。2016年より1.2軍の内野守備走塁コーチを務めあげて頂きました。
2022年からは主に2軍で内野守備走塁の指導をして頂いていましたが、ここ数年はファームの走塁意識は大幅に改善されたと思っています。

盗塁数
2022年 80
2023年 124

UBR(盗塁以外の走塁貢献)
2022年 2.9
2023年 4.8

盗塁、走塁ともに指標からも意識の変化が伺えます。

小深田選手や上甲選手など決して走力があるわけではない選手に対しても盗塁企図させたり、松尾選手や粟飯原選手もUBRでプラスを生み出すなどファーム選手の走塁意識を大きく変えてくれたと思います。

知野選手が今年1軍にて走塁で貢献する姿がありましたが、永池コーチが走塁面で鍛えてくれた影響もあるのでしょう。

来年は永池コーチの元で育った選手たちが走塁面でも、1軍を掻き回してくれることを期待しましょう。

藤田和男コーチ

続いては藤田和男コーチ。
プロ未経験者でありながら、ブルペン捕手、用具係という経歴を経て、2015年からファームのバッテリーコーチに就任しました。そして2022年から育成担当バッテリーコーチへ。まさに異色の経歴です。

革新的なことに挑戦するDeNAを体現するような人物だったように感じています。

何故プロ未経験ながらここまで長期に渡って球団から重宝されたのか。
下記のインタビューを見ればその理由が良くわかるような気がしています。

コーチになってから絶対欠かさないことの一つが振り返りです。試合や練習があった日に「自分の話し方は果たして本当に効果的だっただろうか」とか「僕はこう判断したが、正しかったのだろうか」とか、「監督はこう考え、選手はそのことについてこう考えたが、僕はこう見た。いったいどれが正しかったのだろうか」といったことを振り返り、それをノートに記録します。

第1章 人は、振り返りでしか成長できない | Hello, Coaching!

毎日1時間かけて振り返りを実施するという藤田コーチ。
1年間で消費するノートは6冊にのぼるとのことです。
“毎日自分の行動が正しかったのか振り返る”。コーチとして以前に社会人として素晴らしい人物のように感じます。

またプロ未経験だからこそ、指導の方法も特徴的。

僕はとにかく、選手の練習している姿を動画で撮影し、何回もくり返しその映像を見て、分析してから接するようにしています。

第1章 人は、振り返りでしか成長できない | Hello, Coaching!

プロ経験者ではない分、動画という客観的なツールを用いてしっかりと分析をしたうえで指導を行っていたことがよくわかります。
選手としても違った角度から自身を見つめることができ、納得感のある指導だったのではないでしょうか。

今年山本祐大選手の守備にも大きな成長が見られましたが、昨年藤田コーチとしっかりと練習してきたことの成果を大きく表れた1年だったのではと思っています。

来年以降は球団職員になるということですが、人柄、考え方等を拝見する限り、おそらくどの役職、立場でも貢献してくれるのではないかと思っています。

今後ともベイスターズをよろしくお願いします。

最後に…

いかがだったでしょうか?

今回は「コーチ」という視点からベイスターズを考えてみました。
中々、外からは見えにくいコーチの影響ですが、こうやって見てみると、コーチが与えてくれる影響を考えることはできますし、多くのポジティブな影響を及ぼしてくれたことが推察できます。

ただ一方で新たなコーチから新たな視点で指導されることも選手にとっては大切。
今まで在籍してくれたコーチに感謝しつつも、新たに迎え入れるコーチにも期待していきたいですね。

秋季キャンプからどのようにベイスターズが変わっていくのか楽しみに見ていきましょう!

※データはOne Point Zero Two|1.02 (1point02.jp)より引用

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